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富士登山への準備:体力編

今からだって遅くない

日頃、どのような体力作りを心掛けていらっしゃるでしょう。
心配する必要はありませんが、あればあるだけ楽なのが体力ですので、今回は体力作りに関して、トレーニング方法を、お知らせしようと思います。

体力は、負荷を掛けることで強くなります。負荷がかかって疲労します。その刺激によって、負荷に耐えられるような作りに変えていこうと、身体が反応します。これを超回復といいます。限界を感じることで、その限界より強くなろうとするのが、身体がもっている環境への適応反応です。

理屈っぽく説明しましたが、あまり楽だと効果がないので、少しくたびれる程度に鍛えよう、ということです。

富士登山で一番使う体力は、脚力、腹筋、心肺能力です。

●脚力

下りで膝に負担がかかるのは、足回りの筋力不足。これはスクワットで鍛えます。
スクワットというのは、しゃがむ立つを1回と数える足の運動です。なれていなければ、朝5回、夜5回程度から始めてかまいません。しゃがむ深さは、空気椅子に座るくらい。ももが地面と平行になるくらいまで。おしりがかかとに付くまでしゃがんでしまうと、膝の負担が強すぎます。上半身が前に倒れないようにします。視線を床ではなく正面に向けると、上半身が起きます。
元気なお子様達なら、ワンセット10回から始めて、一呼吸置いてセット数を増やしていっても良いでしょう。

●腹筋

腹筋は毎日やっても大丈夫と言われます。昔風の、足を押さえてもらて床から起きる腹筋は、腰への負担が大きく、基礎体力のある人のやり方。初心者は、仰向けになって膝を曲げ、片足ずつ上に持ち上げます。腹筋のどこに効いているかを確かめて下さい。自分の筋肉と対話できるようになると、通勤でも家事でも、トレーニングに利用できるようになります。

●心肺機能

心肺機能が向上すると高所順応が楽になります。最もポピュラーなトレーニングは、走ること。次が水泳です。20分程度継続して走ってみましょう。適度なスピードは、隣の人と話ができる程度。息が上がってしまうのは早すぎで、長く持ちません。心臓の負担も高いし、乳酸がたまって足が動かなくなります。走行距離の一部に、早く走るのをちょっと入れる程度なら、負担が大きくしすぎずに、心肺機能が強化できます。

20分続けて走れないなら、途中で歩きを入れて、息を整えて継続します。ウォーキングから始めてもかまいませんが、ゆっくり歩いてはトレーニングになりませんので、呼吸が早くなる程度の早歩きにしましょう。スローランニングは毛細血管の発達を促すので、身体の各部分への酸素供給能力を高める効果があります。

●怪我を防ぐ
走るという行為は、意外と膝に負担がかかります。筋力が不十分な方は、アスファルトより土やランニングマシンで走る方が、クッションがあって楽です。
一番危ないのが、運動部出身なのに運動から遠ざかっている年配の方。頭の中のイメージと実際の体にギャップがあるために、無理をしがちです。若いころのイメージを基準とするなら、今やっている運動をトレーニングだと思わず、リハビリだと思ってください。そのくらい動かなくなっていますから。
痛みを感じたら休んでください。休養日を設けることも立派なトレーニングです。

●期間

なまっている体を目覚めさせるのに、最短でも1ヵ月半くらいの準備期間は欲しいところです。余裕を持つなら、半年くらい前から、富士山を目標にして運動を始めましょう。

●継続する

忘れてはならないコツは、故障しないこと。無理は禁物です。つい張り切って、本番直前に痛めたりしないよう、体と相談しながら、上手にトレーニングしましょう。トレーニング方法に対する身体からのフィードバックを聞いて、調整していく余裕がありますから。ぜひ今日から体力作りを心掛けて下さい。


                 登山ガイド・スポーツ指導員  高取剛充